婚活で迷う「事実婚」と「法律婚」
もくじ
再婚・初婚で選び方はどう違う?

婚活をしていると、以前よりも「事実婚」という言葉を耳にする機会が増えています。
特に再婚を考えている方の中には、
- 法律婚は重い気がする
- 入籍しなくてもパートナーとして暮らせるのでは?
- 子どもや相続のことを考えると慎重になりたい
こうした思いから、事実婚と法律婚のどちらを選ぶべきか迷う方も少なくありません。
この記事では、感情論や価値観の押し付けではなく、制度と生活の現実に基づいて、事実婚と法律婚の違いを整理します。そのうえで、婚活世代に近い3組のモデルケースを通して、「どんな人に、どちらが向いているのか」を客観的に考えていきます。
そもそも「事実婚」と「法律婚」の違いとは
法律婚とは
法律婚とは、婚姻届を提出し、法律上「夫婦」として認められる結婚の形です。
- 戸籍が同一になる
- 配偶者としての相続権が自動的に発生する
- 年金・税制・医療・社会保障で配偶者扱いを受ける
- 住民票上も「妻(夫)」として記載される
制度面では最も手厚く、「何もしなくても守られる範囲が広い」のが特徴です。
事実婚とは
事実婚とは、婚姻届を出さずに、夫婦同様の共同生活を送る関係を指します。
- 戸籍は別のまま
- 法律上の配偶者ではない
- 社会的にはパートナーとして認識される場合もある
住民票には「未届の妻」「未届の夫」と記載されることがあり、生活実態としてのパートナー関係が公的に示されるケースもある。
メリット・デメリットを整理すると
法律婚のメリット・デメリット
メリット
- 相続・年金・医療同意などが自動的に認められる
- 子どもに関する手続きがスムーズ
- 老後や万一のときの制度的安心感が大きい
デメリット
- 離婚時の財産分与など、法的整理が必要
- 再婚の場合、相続関係が複雑になりやすい
事実婚のメリット・デメリット
メリット
- 戸籍を分けたまま関係を築ける
- 相続関係を整理しやすい
- 精神的・社会的な距離感を保ちやすい
デメリット
- 相続権や配偶者年金が自動ではない
- 医療や介護の場面で制限が出ることがある
- 制度面は自分たちで補う必要がある
ここで重要なのは、どちらが正しいかではなく、どちらが自分の状況に合っているかという視点です。
モデルケースで考える「向いている選択」
ケース① 50代・再婚・双方に成人した子どもがいる夫婦
背景
- 男性55歳・女性52歳
- 双方に前婚の子どもがいる(すでに独立)
- 経済的にはそれぞれ自立
選択:事実婚
このケースでは、最大のテーマは「相続」です。
法律婚をすると、配偶者には法定相続権が発生します。その結果、自分の財産を誰にどのように残すかを巡って、子ども同士の調整が必要になる場合があります。
事実婚を選ぶことで、
- 財産はそれぞれ自分の子どもへ
- 生活はパートナーとして支え合う
という線引きがしやすくなります。
再婚世代にとっては、感情よりも現実を優先した選択と言えるでしょう。
法律婚と事実婚の比較表
| 項目 | 法律婚(入籍あり) | 事実婚(入籍なし) |
| 戸籍・名字 | 同一の戸籍。同じ名字になる | 別々の戸籍。名字も別のまま |
| 税金の控除 | 配偶者控除・配偶者特別控除あり | 適用されない |
| 相続権 | 配偶者に法定相続権がある | なし(遺言書が必要) |
| 共同親権 | あり(父母の共同親権) | なし(原則、母親の単独親権) |
| 手術の同意 | 法律上の親族として基本可能 | 病院により対応が分かれる(委任状等) |
| 不貞の慰謝料 | 請求できる | 請求できる(実態があれば) |
| 社会保険 | 被扶養者になれる | 被扶養者になれる |
| 住宅ローン | 連帯債務・ペアローンが可能 | 金融機関により可能(住民票が必要) |
ケース② 40代後半・初婚同士・子どもを希望する夫婦が選んだ法律婚
背景
- 男性47歳・女性45歳
- 初婚同士
- 子どもを希望
選択:法律婚
このケースでは、子どもに関する制度が大きなポイントになります。
- 親権
- 戸籍
- 学校・医療・行政手続き
これらは法律婚であることで、手続きが格段にシンプルになります。
理念として事実婚に魅力を感じていたとしても、子育てという現場では制度の後ろ盾が重要になるため、法律婚が現実的な選択となります。
ケース③ 60代・死別再婚・子どもなしの夫婦が選んだ事実婚
背景
- 男性62歳・女性60歳
- 子どもなし
- 老後を共に過ごすパートナーを求めて婚活
選択:法律婚
高齢期になるほど、重視されるのは「もしものとき」です。
- 医療や介護の場面
- 相続
- 生活保障
この世代では、法律婚による制度的な保護が大きな安心材料になります。
事実婚でも補う方法はありますが、年齢が上がるほど、何もしなくても守られる仕組みの価値は高くなります。
正解は一つではない
事実婚が進んでいる、法律婚は古い。
そうした単純な話ではありません。
- 再婚か初婚か
- 子どもがいるかどうか
- 財産や年齢、老後の考え方
これらによって、向いている選択は大きく変わります。
大切なのは、
「気持ち」だけで決めないこと。
そして、
「制度を知ったうえで選ぶこと」。
婚活の場で、ここまで考える意味
結婚はゴールではなく、生活のスタートです。
特に再婚や中高年の婚活では、
- 幸せそうか
- 続けられるか
- 困らないか
この3つを同時に考える必要があります。
事実婚も法律婚も、どちらも選択肢です。
自分の人生にとって、どちらが現実的か。
その判断材料として、この記事がお役に立てば幸いです。
※事実婚における年金・医療同意・相続など、女性が不利になりやすい制度面については、別の記事で詳しく解説する予定です。
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